ケーキやパンは、よく焼いて持っていきます。クリニックに来られる患者さんでも、ラッキーな人は私のパンとかケーキをもらったことがあります。料理も時々持っていきます。たくさん作ってしまったときは、スタッフにおすそ分けします。
最近では、新しょうがの甘酢漬けが好評でした。昔は紅ショウガも作っていましたが、今の環境では作れなくなってしまいました。女医は料理をしないように思われがちですが、両極端ですね。全くしない女医もいますし、ちゃんと料理をしている女医もいます。
なぜ料理が上手なのか不思議に思われることがよくありますが、理由は簡単です。学生時代、お金がなかったからです。親に無理を言って下宿をさせてもらったので、月の生活費は3万円程度でした。夏休みには喫茶店でアルバイトしたり、週末に家庭教師のアルバイトをしたりしていました。
私立の大学だったので、周りは医者の子どもたちで結構裕福でした。誕生日パーティーはスナックを借り切ってやっていました。でも、プレゼントを買うお金がないから、ケーキを焼いていたんです。
臨床研修が始まると、アルバイトもできなくなったので、同級生に夕食を提供して500円もらっていました。ほとんどが下宿で、自宅から通っている人はほとんどいなかったので、6年間も外食していると飽きちゃうんですね。
夕食を作ってくれるなら、お金を払ってもいいよって話から、500円もらうようになったのです。3人ぐらいの男子学生が、食べに来ていました。親が料理するから教わったのかと思われがちですた、母親は全く料理に興味がありませんでした。
子どもの頃は、どんな晩御飯を食べていたのかあまり記憶がありません。父親が会社の社長をしていたので、家は豪華でしたが、内情は悲惨なものでした。1日の食費が1000円しかないのに、父親のおかずに500円以上使ってしまうので、母と3人の娘はまともなものを食べていませんでした。
父は、別に食事をしていたので、家族で食卓を囲んだ記憶は正月ぐらいでした。自宅は接待の会場になっていたので、しょっちゅうお客さんが来ていました。台所も見せる演出がされていたので、外国製の冷蔵庫とガスオーブン、食器洗い機がありました。
でも、お客さんが来ていると食卓で食べるわけにいかないので、食器棚の陰でしゃがんでごはんだけ食べていたような気がします。知り合いの社長さんの奥さんは、そんな私たちを見てよく怒っていました。”てーちゃん、ちゃんとご飯を食べさせてあげなさい”って。
そんな生活がどうのこうのなんて思ったことはありませんでした。そんなものだと思っていたのです。小学生の時は土曜日のお昼に帰ってくると、妹たちの昼ご飯を作っていました。何を作っていたのかは覚えていませんが、母親の代わりをしていましたね。
自宅にオーブンがあったので、高校生ぐらいでケーキを焼くようになりました。何度も失敗していた気がします。料理は誰に習うこともなく、本を読んで作っていましたから、知識は本からだけでした。
食べたことのない料理も作っていましたから、何年かしてから本物を食べる機会があると、こんなものだったんだと感動したりしていました。今でもほとんど外食はしませんから、食べたことのないものを作って遊んでいるという感じです。
親が料理をしなかったから、料理がうまくなったんだと思います。節約しないとならなかったから、ケーキが上手になったんです。今は、甘さの強いものは食べられませんから、自分で食べたいものを作るんです。
最近はあんパンを作りましたが、あんも手作りで冷凍して保存しています。桜餅を作ろうと思っていたのですが、めんどくさくなってあんパンになっちゃったんです。シュークリームも家で作りますので、買ってくることはありません。
理由があってそうなったんですよ。女医も普通の女性ですから、当たり前のことじゃないんでしょうか?不思議がられる方が、私には不思議です。