乳がんの手術で、乳房温存術と呼ばれるものがあります。本当は、乳房部分切除、乳房半分切除、4分の3乳房切除が正しい表現です。温存手術などというから、乳房の形が変わらないなんて思うんですよ。
英語からの直訳なのかと思ったら、conservingという言葉は、保護するという意味で残すって意味ではないようです。なぜ、こんなネーミングになったのか?医療側が上から目線で決めているからです。
もともと乳がん手術は乳房の全摘出でした。乳がんは、多発していることが多いからです。ところが、放射線療法の発達で、乳房を残しても放射線でがん細胞を減少させることができるようになったのです。でも、これも100%ではありません。5%ぐらいは再発しますから、死滅ではないのです。
もともと全摘していたのだから、少しでも残せば“温存”だと医者が考えたのでしょう。ところが、欧米人ならともかく、乳房の小さい日本人では残るどころか、ひどい変形をおこします。もともと、乳房温存手術は、お乳のでっかい欧米人が、切除されてしまうことを嫌がり開発されたのでしょう。それが、日本に導入されてきたのだから、日本の治療法ではないわけです。
患者側の立場に立って、女性がネーミングすれば、乳房部分切除となったでしょう。医療が男性の医者中心で動いているから、こんなことになるんですよ。少しでも残してやったんだから、満足だろうっていうようなノリでしょう。
乳房を一部でも切除したら、変形はひどいものですし、皮膚の感覚は無くなります。手術する場所によっては、乳首もいったん剥離しますから、乳首の感覚もなくなります。へこんだ場所を周囲の乳腺で寄せて修復すれば、いったん胸襟から乳腺が外されますから、座った状態では乳首は上に上がってしまい、左右の乳首の高さが変わってしまいます。
今まで、乳房温存手術を見てきて、許せる範囲の変形だと思ったのは、脇に近い場所にできた1cmくらいの小さい乳がんだけでした。乳がん手術ではがんから2cm離れた場所まで乳腺を取ってしまいます。3cmの乳がんまでは温存手術が可能だと言われていますが、3cmなら、7cmの直径で乳腺を切除するのです。そんなにとったら、温存というでしょうか?
最近、1cmに満たない乳がんが見つかった方と話をしました。ラジオ派含めて、すべての手段を説明したのですが、彼女は乳房切除がいいかもしれないと言いました。乳房を残すことにこだわらないし、治療に時間がかかるのは困るからだそうです。
年齢、家族環境、職業、金銭的問題、居住地などいろんな要因で治療方法は変えないとなりません。私は、がん治療に嫌気がさしました。今は、高齢者の治療に面白みを感じています。がんを持ったままでも、元気に生活している方を見ていると、がん治療って何なんだろうって思います。