まず驚いたのは、インスリンという注射を発見したのが、外科医だったということです。二人の外科医が見つけて、製剤にしたそうです。確かに、手術で直接臓器を触っているから、そういう発想ができたんでしょう。私も外科医のはしくれですから、これはとてもうれしかったですね。
早期のインスリン介入がその後の治療にいい影響を与えることもわかりました。これは、だいぶ前から言われていることですが、インクレチン関連薬の効きがよくなるようなので、とても参考になる話です。ただ、インスリンの効果ではなくて、糖毒性を解除するからのようです。
インスリンから始めて、内服に切り替えていく手法は、参考になりましたが、教育入院で行われていたことには少し疑問が残りました。2週間の教育入院、いいことだと思うのですがこのご時世、2週間もまとめて休める人がいるでしょうか?
休めたとしても、夏休みなど、休暇がすべてなくなってしまいますよね。うちには、入院したくないという患者さんがたくさん来られるので、手術も最小限で入院の必要がないものを行い、糖尿病治療も通院で済ませています。
通院で糖尿病治療を行う場合、何度も来てもらうわけにいかないので、途中はメールでのサポートになります。重症の場合は3日に一度連絡をもらい、インスリンの量の指示をします。食事が取れないとき、激しい運動をした時、風邪をひいたときはどうすべきかを十分教育してからになります。
十分理解してもらえないと、通院ではコントロールができないので、ある程度の理解力は必要ですが、高齢の方でも病歴が長いといろんなことを御存じなので、案外うまくいったりします。
一方で、元気な方でも生活環境をガラッと変えてしまったほうがいいと考えて、教育入院を勧める場合もあります。多めに食事を用意する家族や、これぐらい大丈夫よと言って菓子類を手渡しする職場仲間、悪しき習慣からいったん離した方がいいと思った時は入院はとてもいい手段です。
通院でも入院でも大切なのは悪循環を打ちきることで、そのためには本人の努力が不可欠です。でも、一旦、悪循環から抜けると予想以上に良くなっていきます。結局、どんな状況でもあきらめないってことが大事かもしれません。