施設での看取りと病院での看取り
施設での看取りと病院での看取りは全く異なります。病院では容態が悪くなってきたら、心電図モニターというものをとりつけますので、詰所で心臓が動いているかどうかは確認できますし、看護師が夜中も起きているので、何時であっても心臓が止まったことは確認できます。
ところが、病院でも確認できないことはあります。看護師がラウンドに出ていて、詰所に誰もいなければ、心電図がフラットになっても気づきません。ラウンドに出ているのはさほど長い時間ではないのですが、盲点はあるわけです。
施設ではモニターはしませんので、死亡されてから発見されることが多々あります。自宅で生活してもらうことを想定しているので、当たり前の話ですが、家族の方は理解していないことがあります。自宅という扱いなので、亡くなられてもすぐに死体安置所に移されることはありません。
死体安置所に移されるのはどれだけむなしいことなのか、経験したものでなければわかりません。薄暗い、寒い場所です。テレビドラマで看取りのシーンをよくやっているので、看取りができると思っている家族は多いのですが、現実は違います。
看取ってあげようとつきっきりで見ていた家族もいましたが、家族が昼ご飯を食べに出た間に患者さんは亡くなりました。そんなものなのです。私自身、父親の死亡には立ち会っていませんし、死んだと連絡が来ただけでした。病院に到着した時は既に安置所に移されていて、検死のために長い時間待たされました。
救急車で搬送中に亡くなったので、仕方ないんです。人がなくなる時は孤独なものだと思います。家族に看取られて亡くなるなんて、めったとありませんし、あるとすれば家族がなくなるのを待ってる状態だから、何となく嫌な雰囲気になります。
死に方はだれにも決められませんし、何時死ぬかも運命で決まっていると思います。人間の力ではどうにも変えられないんですよ。