今まで、うつ病は確定診断する方法がありませんでした。SDSやSTATという心理の検査をする質問用紙はありましたが、内容がかなりきつい内容で、日本人向けではないと思っていました。うつ病の診断は、医者の判断というあいまいなものしかなかったのです。
私自身も、うつ病の方を治療したことがありますが、見た目は全くうつ病と言う感じはしませんでした。ただ、家族の訴えは、典型的なものがありました。テレビを見なくなった、好きだったものを食べなくなった。テレビをつけてそっちを向いていても、見ているわけではないようで、内容を聞いても答えられないのです。
本人は、そういったことになっていることを隠したいので、嘘をつくこともあります。よくどんな番組を見ますか?と聞くと、料理番組と答えた人がいました。でも、家族は見ていないといいます。デイサービスで自宅まで送ってもらったら、そのまま玄関で何時間も寝ているという話も聞きました。
ただ、そんな場合でも、うつ病なのかうつ状態なのかは、判断が難しいところです。精神科の医者は、うつ病と診断せず、うつ状態といいます。病気と思っていないからかもしれません。確かに、今まで見てきたうつ状態の方は、家族の期待が大きすぎるようでした。元気になってほしい、その期待が大きすぎるとそれにこたえられない自分が嫌になり、うつ状態になる気がします。
うつ病だと診断を受けている人に、うつ病じゃないと判断し、薬をやめさせ正解だったこともたびたびありましたし、うつ病かもしれないと言う人に、うつ病じゃないと言ったこともたびたびあります。たいがいは、目を見ればわかります。後は、誘導尋問ですね。。。問題は、うつ病だと思われている症状の中に、本当の病気が隠れている可能性があり、それを発見するほうが重要なのです。
些細な症状を訴えてくる人は多くいます。それが、正常範囲のことなのか病的なものなのかを判断するのは、とても難しいです。ストレスでしょうと言うことは簡単ですが、ストレスじゃなかった場合、何を考えないとならないかが、とても重要になります。一つ一つの症状から、可能性のある病気を探して、検査して否定して、そんな作業が続きます。
なので、こういった場合は、短時間では解決できないことのほうが多いのです。そのうち、ストレスも検査できるようになるといいと思います。ストレスは、本人がかかってないと思っていても、深層心理でかかっている場合もありますし、それを探し出すのは本当に大変だからです。
胸の痛みを訴える人の中には、心筋梗塞から、逆流性食道炎、肋間神経痛、乳腺症、狭心症など様々な疾患が隠れています。痛みの出るタイミング、場所などあらゆることを聞き出して判断しなければなりません。そういったことを探すのには、患者さんの協力も必要です。そういえば、こんなときになりますなどと出てきだすとゴールが近くなってきます。それがなければ、判断できないのです。
病気を治すと言うより、不安を感じたり、生活に支障のある症状を治すことが重要だと思います。病気は、うまく付き合っていかないとならないものも多くあり、治らないもののほうが多いからです。以下に楽しい生活を送れるようにするか、それが医療がすべき仕事だと思います。