欧米には寝たきりの老人はいないそうです
常日頃、疑問に感じていました。ベットにくくりつけられて、鼻からチューブを入れられたお年寄り。何のために生きなきゃならないんだろうと思っていました。家族は、簡単にくくりつけて良いと言います。自分が同じ目にあったらどう思うんでしょうね。
ある患者さんとの別れがきっかけでした。彼も最後までくくられていました。かわいそうにと思って、抑制を外した看護師がいました。そしたら、昼食をぶちまけてしまったのです。あんたには、情けをかけてやったらだめだねと言いながら、再びくくっていました。
私も、そんなことしちゃだめでしょと言いに行きました。そのときは、わかったという顔をします。彼がなぜそんな行動に出るかは、みんな知っていました。自分は死ぬつもりで、みんなに最後の挨拶も済ませていたのです。
ところが、ほかの患者さんがどんどん先に行ってしまいます。それに、腹を立てていたのです。その後、何度か顔は見ました。詰め所の方をいつも見ていました。手を振ってあげようかとも思いましたが、抑制されているので、手は触れないでしょう。
ある朝、彼の話をほかの施設で話していて、午後に出勤するとベットが空になっていました。前日までしゃべっていたようです。遅れて出勤してきた介護スタッフも、”○○さん”と名前を呼びながら部屋に入っていってすぐ出てきて、寂しいなとつぶやいていました。
わがままで、大変な患者さんでした。でも、みんなの心に切ないものが残りました。私と同じことを言ってたスタッフもいました。最後に声かけてあげたらよかったと思うって。
欧米に寝たきりがいないのは、食べられなくなったら何もしないからだそうです。日本のように、点滴や経管栄養、胃瘻などしないそうです。私もしなくていいと思います。いぬだってねこだって、食べられなくなったらなくなってしまうものですから。