良性疾患と早期がんの手術
最近、疑問に感じたことがあります。良性疾患なら手術は3カ月待ち。早期がんだから、手術は順番待ちになるということです。確かに、進行がんで見つかった人を急いで手術してきました。でも、待たせるにもほどがあると思います。良性疾患だといっても、日常生活に支障があるなら、急いであげるべきだし、早期がんだってほっておけば進行してしまいます。
最近は、なぜそんなことになってきているのか?一つには、情報が得やすくなったんだと思います。手術を受けるなら、最高の場所で受けたいという患者さんの思いもあるのでしょう。どこが優れているかは、簡単にインターネットでわかるようになりましたからね。それとは別に、国の方針で手術件数が集まらない病院では、手術しても全額もらえなくなったということもあります。それで、外科をなくしてしまう病院が相次ぎました。
私が昔勤めていた病院でも、すでに外科はなくなっています。悲しいことです。小さい病院でしたが、腹腔鏡の手術をかなりやっていましたので、道具も揃っているし、麻酔機もいいものに買い替えてもらえました。でも、今は使われていないんでしょうね。もったいないことです。別の病院でもそんなことがありました。機械はそろっているけど、外科をやらなくなったので、使っていないと言っていました。
腹腔鏡手術は免許が必要になったようですし、私のように昔やっていても今はできなくなっているのでしょう。でも、開腹手術をあまり知らない医者が、腹腔鏡の手術ができるからといって、レベルが高いのでしょうか?私の年代は、開腹手術で拡大手術が主流だったので、かなり広い範囲のことを知っています。見えない場所の解剖も知っているってわけです。そういった外科医が働ける場所は、どんどん減っているんだと思います。
老人病院で、手術をしなくてはならないことになりました。いろんな事情で、手術をしている病院へ転送できなかったから仕方なかったのです。かなり古い環境でしたが、何とかなりました。リスクの高いことは引き受けたくないのは確かですが、元気になった患者さんを見ると、頑張ってやってよかったと思います。