検診を過信していませんか?
昨日、後輩の女医から、検診の施設で働いているのはもったいないとメールが来ました。先生は、臨床の医者だから、もったいないですよって。私は、検診にしか行かない人たちがいるから、その人たちと話がしたいから続けたいと返信しました。
私たち、医療関係者の間では、検診の仕事は評価されません。検診施設に勤めていた経歴は、その後の転職には不利になります。多くは、非常勤でしか働かないし、看護師たちは1年続かないそうです。検診の現場では、常勤は非常に少なく、そういう人たちはもう他では働けないので、必死で仕事を継続しようとします。やめさせられたら困るから、不条理なことがあっても黙っているのだと思います。
クリニックで検査をすすめた時、検診で受けたからいらないとか、検診で受けるから必要ないと言われることがあります。今までは、それを許していましたが、今後は許可しないことにします。その日の炎症の程度や、栄養状況をみるためだし、空腹時で採血している検診のデータは参考にならないからです。
検診で、異常が見つかって来院された方には、再検査をします。それは、検診の結果を信用していないからです。検診とは、集団で行われるもので、個々の症状にあわせて調べるものではありません。採血の結果を出す検査技師も、流れ作業でやっているだけです。臨床の現場では、症状に合わせて病気を予測して検査します。なので、検査オーダーもつじつまが合わなければ、検査会社から問い合わせが来ます。検査値に問題があっても、連絡が来ます。そうやって、ひとりひとりを大切に扱っているのです。
検診でおかしいと思うのは、施設のレベルもあると思うのに、会社指定の場所で受けるから、選択肢がないことです。どこで受けたのか聞いて、そこはだめでしょって思うこともあります。でも、指定だから仕方ないと聞きます。検診施設側は、ビジネスでやっているので、数をこなしているだけです。検査結果は郵送されるのみのことが多く、人間ドックなど医師面談があっても、臨床経験のない医者だったりもします。
臨床をやっている医者は、予測をして、その結果を知り、新たに知識をつけて行きます。必ず結果に責任があります。治療をしてみてどうなるか、悪化した場合どうなるかも知っています。でも、結果だけを説明する医者には、そういった知識がありません。放置してどうなるかも教科書でしか知りません。そうなれば、熱心に説明するでしょうか?
検診施設で働いていると、医療機関より検診のほうが格が上だと勘違いしている人が多くいることに気づきました。症状があったけど、検診の予定があったから、受診しなかったとか、毎年検診を受けてるから、医療機関には行かないとか、そんな言い方をされます。検診は、検査をするだけで、治療する場ではありません。症状があれば、すぐに医療機関に行くべきなのです。人間ドックで胃がんが見つかってなくなった人がいると聞きました。顔色が悪いと言われていたのに、医療機関に行かず、人間ドックの日程を待っていたようです。早くに医療機関に行っていれば、助かったかもしれません。そんな間違いを犯してほしくないといつも思っています。