高齢者医療に接してみて
高齢者医療を手伝ってみて、こういったこともいいなあと思うようになりました。家族が見ていれば、いずれ疲れてきて冷たく当たってしまうでしょうが、仕事と割り切って接している人たちは、本当にあったかく接しています。細く長く生きてほしいとか、われわれのしているのは見守りですからとか、どこか割り切れない気持ちを持ちながら、今できることを探しています。
95歳の女性に、心エコーをさせてもらいました。自分自身の勉強のために、スタッフが気になっている患者さんに検査をさせてもらっているのです。検査が終わった時、見せてくれと言われ、心エコーの本を見せました。心臓とはこんな形をしているんだと話しました。私の中に、こんなものがあるんだと感心されていました。私は、子供のころに、心臓だけは強いと言われていたんだと、今でも走れるぐらい心臓は強いといっぱい話をしてくれました。
実際は、彼女は寝たきりです。でも、ときどき、動けると思って立ち上がろうとするから危ないんですとスタッフが話していました。でも、眼鏡をはずして、本を覗き込む姿は、何歳になっても興味あるんだなあと思いました。
夕食前に、つらいから帰ると泣いているご老人がいらっしゃいました。ここにいても仕方ない、部屋に戻してくれと、しきりに車いすを動かして帰ろうとします。スタッフが、もうじきゼリーが来るから、ゼリー食べたら部屋に戻ろうねって一生懸命話しています。隣のご老人も心配して、部屋に帰してやったらどうだと言っています。前に座っている二人のご老人は、心配そうに見ていました。
スタッフが話してくれたのですが、食欲がなくなって、高カロリーのゼリーにしていると。食欲がなくなったことが、ショックなようです。もうじき夕食が来るから、一番に探してあげるからと声をかけていました。夕食っていったって、ゼリーだけやないか。。。。確かに、周りでちゃんとした夕食を食べている中で、自分だけゼリーなんて、耐えられないんだろうなと思っていました。
そのうち、夕食が運ばれてきて、ゼリーは一番に彼女の前に置かれて、お隣のご老人も、食べられるように手伝ってくれて、彼女は、スプーンを持ちました。食べてくれるのかなと心配して見ていたのですが、ゆっくりとした動きで一口食べた時は、本当においしそうな顔をしていました。すぐにふた口目を食べようと、スプーンで大きさまで調整していました。
来週、また会えるかなあ。。。そう思って老人病院を後にします。