乳がん治療に関するニュースを見ました(その2)
十数年ぐらい前からだったかもしれません。乳がんの抗がん剤治療がどんどん変わっていきました。昔は、よっぽど人い人だけに入院で抗がん剤を使っていました。副作用も強かったので、無菌室にして投与していました。手術が終わってから、1-2ヶ月ぐらいだったように思います。手術前に抗がん剤を投与したのは、炎症性乳がんだけでした。乳房全体にがんが回って、乳房自体も膨れ上がるので、抗がん剤で少しがんをやっつけてからしか手術できなかったからです。
ところが、抗がん剤の副作用が軽減されてきて、副作用の弱い薬も出てきて、抗がん剤治療は外来で行われるようになってきました。ひどい吐き気を抑える薬もできたので、気軽に抗がん剤を受けてもらえるようになったのです。外来に、抗がん剤専用の部屋を設けると、国から補助が下りるので、大病院は軒並み抗がん剤のための部屋を作りました。リクライニングができるイスとテレビなどの暇つぶしの設備などができたのです。
また、補助金が大きいため、抗がん剤専門の開業医もできてきました。入院の必要が無くなったから開業医でできるようになったんです。乳がんの抗がん剤治療は、手術後半年間行われるようになり、手術前にも3ヶ月間から半年間という長期間行われるようになりました。そのほうが、予後がいいとわかってきたので、医者も勧めますし、患者さんも希望します。乳がんは、昔は少なかったので、一部の外科医が扱うのみだったのに、乳がんがうなぎ上りに増えてきて、検診事業も盛んになってきました。
学会では、放射線科医、産婦人科医も参入してきて、腫瘍内科も入ってきました。抗がん剤治療を専門に扱う分野です。ところが、抗がん剤は、外来売り上げに貢献しますから、外科が離しませんよ。本来は、外科医は手術だけするものですが、日本では、手術前から手術後まで扱うのが普通なので、いつまでたっても外科医が抗がん剤にもかかわっています。
そのうち、乳がんはビジネスに変わってきました。乳がん検診にもいろんな企業が参入してきて、乳腺エコーは、町医者が気軽に取るようになりました。当然、診断どころではありません。紹介状には、エコーをしたけど、わからんといったような内容が平気で掻かれ、診断名には、乳腺腫瘍疑い、などわけのわからん診断名、わからんのなら、最初から検査をするなと言いたかったものです。
40歳以上に適応があるマンモグラフィは、医療機関や検診施設によっては20歳代の人にも平気で行い、被爆のリスクも説明されていません。乳がんを触ったことがない産婦人科の医者が平気で乳がん検診の触診を行い、乳がんについてのコメントを述べています。私からすると、????ばかりです。
私が乳がん治療を行っていたころは、かかる費用と時間をすべて説明したうえで、治療を選択してもらっていました。抗がん剤をしたからと言って、再発が起こらなくなるなんて補償など何もないんですから。抗がん剤を受けた人の3割程度が、その恩恵にあずかってると言うことを聞いたこともありますから、それなら7割の人は、無駄なお金と時間を使ってしまうのです。
抗がん剤治療の取り合いで、医者同士の対立も見てきました。一体、何のためにやろうとしているんだろうと思いました。明らかに裏金が流れているだろうことも、見てきました。そういったことを見てきたうえで、乳がん治療から離れることにしました。乳がんだけではなく、すべてのがん治療から手を引いたのです。意味がわからなくなったからです。早期胃がんには、内視鏡で粘膜をそぎ取るだけで済むようになりましたが、そうすることで、再発を監視するのに3カ月おきに内視鏡を行い、出てきたがんを見つけては、粘膜をそぎ取り、そのうち、そぎ取れない状態になったから、胃を切除しましたなんて、発表も平気で行われるようになりました。
早期胃がんなら、最初から手術をすれば、治ってしまうものですよ。それを、簡単なもので済まして、結局2年後に手術しましたなんて話している医者の顔が馬鹿に見えてきたんです。一体、その間の患者の不安は、どう考えているんだと思いました。これ以上がん治療にかかわれば、自分がおかしくなるって思ったんです。