薬の一般名表示が始まりました
このことは、現場ではかなり前から望んでいたことです。特に、医者は習うときは一般名だったのに、現場に出ればすべて商品名だったので、医師免許を取ってから大変です。学会や、研究会に行けば、発表は一般名でなされるので、知らない分野の勉強会に行くと、ちんぷんかんぷんになるんです。おまけに、海外では一般名でしか通用しない国もありますから、海外へ旅行される方には、一般名を教えていました。特に、糖尿病の患者さんは注意が必要でした。
商品名での混乱は、ジェネリックが増えたことで、一段とひどくなりました。先発品と呼ばれる薬の商品名をもじったような名前を付けてくるので、薬剤名は多種多様になってしまったのです。商品名だと似た名前のものを間違って使うこともありました。特に、抗がん剤の分野では、体表面積当たりの使用量が違うので、名前を間違えただけで、死にいたることもありました。
長く、一般名表示に変わることを望んでいた現場では、今回の改正は本当に待ち望んだものでした。ところが。。。。
クリニックでも、早速処方箋を一般名表示に変えました。厚労省が推奨する薬品リストはごく限られたものでしたが、医師会はすべての薬の一般名表示を推奨していたからです。ところが、オンライン請求する段階で不具合がわかったのです。データはエラーになり受け付けてもらえません。何がおかしいのか、事務が必死に調べていました。
結局、薬価の高い薬で、ジェネリックが出ているものしか、一般名表示は許可されていないのです。それなら、処方箋は、一般名と商品名の入り混じったものになり、ますます混乱を起こします。おかしな話です。
それ以外にも、おかしな話はあるのです。今までごく一般的に使われてきた薬が、特許が切れてジェネリックが認可されるころになると、なぜか製薬会社から新薬が出ます。新薬のほうが、よく効くし副作用も少ないと、今まで使っていた薬から新薬への変更をすすめられます。新薬が出るころには、著名な先生を呼んでの講演会もたくさん行われます。そこでは、必ず新薬がいかにいいのかが話されます。講演に呼んでもらったから、新薬を否定するはずもありません。また、開発に携わっている先生である場合もあります。
どんな世界でもそうですが、新しいものがいいとは限りません。医療の世界でもそうです。古いもののほうが優れている場合もたくさんあります。でも、医療ではどんどん新しいものが出てきます。検査も技術も何もかも新しいものだらけです。その中で、どれが本当にいいものなのか見極めていく必要もあるのです。
今回の一般名表示の改正は、まったくもって改悪だったと思います。