高血糖と低血糖のひらいクリニック

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ひらいクリニック

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死亡診断書というもの

死亡診断書というものは、医者しか書けません。それがないと、遺体の搬送もできないし火葬もできないのです。死亡診断書がどうして必要なのかは、病死か外因死かを知るためだけでしょう。外因死というのは、事故や他殺のことです。特に、他殺じゃないかを調べているのです。

 

かかなければならない項目は、直接死因、それに関係したと思われる病名、手術などです。死亡日時、場所、そういったものも必要です。一番難しいのは直接死因です。人は必ず心不全で亡くなります。なにが原因でも、心臓が止まらない限り生きていられるからです。ところが、心不全は病名ではないので、書くことは許されていません。それで、心不全につながったと思われる病名をかくのです。

 

死亡診断書は、統計にも使われます。何による死亡がふえてきているのかを調べています。しかし本当の死因を調べようと思えば、解剖するしかないのです。病院で亡くなった方は、家族の協力があれば解剖を行います。何度か立ち会ったことがありますが、死因だと思ったことが間違っていたこともありました。医者のすることは、予測にすぎないから、その予測を大きく超えることだってあるわけです。

 

また、死亡診断書の書き方には、かなり厳しい規定があります。空欄はそのままにすることが出来ず、必ず斜線を引くのですが、それが印刷された文字に重なってはだめになっています。死亡診断書と死体検案書は同じようしなので、診断書の場合は、検案書という文字を2重線で消して行きます。とても重要な書類なので、不備がないか何人もの目で確認して、それから発行することになります。

 

直接死因で書かれた病名は、家族にとっても大きなものとなります。なにでお亡くなりになられたのですかと聞かれるたびに、その病名を告げないとならないからです。人に知られたくない病名もあるわけで、そういった場合、どうするか医者はかなり悩みます。結局、当たり障りのない病名に変えてしまうこともあるのです。

 

死亡診断書の制度がいつからできたのか知りませんが、これが出来たために、自宅で見取ってあげることが難しくなったと思います。死亡診断書をかける医者は、24時間以内にその患者を診察した医者に限られますので、具合が悪くなると必ず医者に診てもらわないとならないからです。そうじゃなかった場合は、検死になりますので、警察から検察医が呼ばれて診断します。もし、救急車で病院に運ばれたとしても、到着時に心肺停止の状態であれば、必ず検死に回されます。それを一度でも経験された方は、検死に回されるのだけは避けたいと言います。

 

わたしの父も救急車の中で、心肺停止になったので、検死になりました。病院の霊安室に移されて、検死が終わるまで誰も触れることはできないので、長いこと待ちます。検死で、何かの疑いをかけられたら、解剖に回されるので、なおのこと時間がかかります。わたしの父は、あるいて救急車に乗ったのですから、そこに医者がいれば、検死にはならなかったはずです。医者しか診断が出来ないというのは、そういったところまで影響が出ます。

 

病院の常勤をやめた時、やっと人の死とかかわらなくて済むようになると思っていました。ところが、開業医でも人の死と向き合って行かないとなりません。医者になってから何枚もの死亡診断書をかきましたが、それになれることはたぶんないでしょう。人の死がたった一枚の診断書で片付けられることの重みは、医者にしかわかることはないでしょう。

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