ひらいクリニックでの実習を通して学んだこと
病院・助産院での助産学実習において、「妊娠中に痔になり、お産後さらにひどくなって痛くて排便するのが怖い」、「痔の手術をしたけれど今回の出産を機にまた悪化するのではないかと思って不安」という周産期を機に痔に悩む女性たちに出会いました。また、授業を通して女性はホルモンの影響で便秘になりやすいこと、露出の多い服装が多いため身体を冷やしてしまうことが原因で痔になってしまうということを知りました。更に、痔について相談しにくく受診が遅れることがあること、肛門を見せることに対して羞恥心を持つ女性がおられるという現状があり、肛門科の女性専用外来に興味を持ちました。このような痔の状況から、女性たちの痔についての実情、実体験を知ること、肛門科で行われている具体的支援について学ぶことで、痔に悩んでおられる女性の立場を理解し、助産師として女性への支援のあり方を考えたいと思い実習を行いました。
ひらいクリニックのホームページを初めて見たとき、消毒液の臭いがしそうな雰囲気ではなく、女性たちが緊張せずにクリニックのドアを開けられそうな感じがしました。私自身も、初めてクリニックに行ったときには、和の雰囲気にアロマの香りが漂い、白衣ではない私服のスタッフの方々をみると緊張感が和らぎました。日常生活の延長線上に医療があるという考えを平井先生にお聞きし、病院に行くのをためらう・相談しにくいという思いを持った女性たちでも、ひらいクリニックは受診しやすい環境であると感じました。女性を支援していくためには、女性を取り巻く環境を考えることも大切な要素であるということを学びました。
平井クリニックで行われている具体的な治療・支援については、まず、女性たちがどのような思い、症状で受診されたのかについての問診がありました。次に内診にて、痔の実態を診ていました。痔ができている部位から、医師は対象者がどのような排便の仕方をしているかを伝え、対象者はトイレの使い方を知ることで排便習慣を変えていくことが基本であるということでした。そして、平井先生は「お尻のことをきっかけに自分のからだのことをみてみましょうよ」というスタンスで、受診された方には、血液検査を受けてもらい、高血糖、低血糖や高コレステロール血症などの生活習慣病を早期発見・早期治療していき、女性が自分の健康を考えていくきっかけにしようと働きかけていました。お尻だけを診ないで、口から診ていくという、つまり食生活を見直していくことに、痔の根本的な治療・支援があるのだということが分かりました。
排便の正しい姿勢(洋式トイレの正しい使い方)は、和式トイレを使うときの姿勢で足を床に下ろす姿勢であるとお聞きしました。妊娠中に発症する痔に関しては、ホルモンや血流による影響の他に、妊娠による子宮の増大が関係していました。妊婦は、排便時に前かがみになることが難しいため、便が直腸を傷つけ痔の原因になるため、妊婦には、足をできるだけ広げ、60度くらい前かがみになって排便することを伝えていくという具体的支援も知ることができました。また、排便時には、リラックスすることが大切で、肛門がリラックスしていないと便が下りてこないので、リラックスするために深呼吸をする、そして、肛門はゆるめたままで、腹筋を使って直腸をおすというイメージで便をするのが、腸や肛門といった人間の身体の構造にあった自然な排便の方法であるということを学びました。これは、分娩のときの状況にとても似ていると思いました。子宮口が開くにはリラックスが大切で、リラックスして子宮口が開いていくと児の下降がすすみ、児娩出時には、陣痛に合わせていきんでいくという状況です。このように女性が人間の身体の構造にあった排便の方法を知ることで、妊娠中からの排便コントロールにつながり、分娩期には、排便をするときのようにリラックスしいきんでもらうというイメージがつきやすいのではないかと感じました。さらに産褥期には、産道裂傷があるために、便を出すのが難しいという女性たちがおられますが、会陰や肛門部に力を入れなくても腹筋に力を入れることで排便コントロールができるようになるのではないかということも感じました。
私が実習に行った2日間の様子では、受診されていた女性は、20代女性が多いという印象を受けました。また、夏休みには学生も多く受診されるそうです。受診されていた20代女性に受診の経緯を伺うと、1年くらい我慢していて、結婚を機に治したいという思いがあり、インターネットで雰囲気がいいなということ、女の先生がいいなということでひらいクリニックを選んだということでした。20代の女性が多いという特徴を考えると、若いときから、痔を通して食生活、生活習慣を振り返り、見直していくことで、その後の自身の健康につながっていくのではないかと感じました。また、そのような女性たちが、妊娠したときには、その習慣を次の世代へも受け継がれていくことにつながると思います。
排便の仕方を学ぶことで、周産期の女性たちへの具体的な支援を考えることができ、痔を通して、口から治していく、つまり食生活・生活習慣を見直すことはその女性の一生の健康を見直すきっかけでもあり、次の世代の子どもたちへつなげていくことができるのではないかということに気づくことができました。
今後、助産師として女性と出会っていく中で、痔や排便のことをきっかけに食生活・生活習慣を見直す機会として感じてもらえるよう支援し、また、その習慣が次の世代へつながっていく可能性を持つものとして女性たちに伝えていきたいと思います。
神戸市看護大学助産学専攻科 小田 聡子
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こちらこそ、いろんなことが勉強できました。また、来てくださいね。。。