土地に呼び戻されると言うこと。。。
私は医学にかかわってきたので、科学者だと思います。データを集めて、論証して結果を導き出す、そういう仕事ばかりしてきました。今でも、患者さんからデータを集めて、今は普通に語られていることに何かおかしなことはないか探し続けています。
しかし、非科学的なことが存在することも知っています。特に、土地に縁があることはよく体験してきました。ある内科が閉鎖に追い込まれています。友人とともに、閉鎖後にすぐ再開できる準備をしています。医療機関には、そこに通う患者さんたちがいるからです。患者さんたちのために、閉鎖するわけにいかないのです。
だいぶ前から、その開業医のことは知っていましたが、場所は聞いていませんでした。ところが、昨日たまたま散歩していて発見したんです。父の会社があった場所のすぐ近くでした。その場所には元々開業医はいなかった気がします。父の会社の向かいに内科がありましたが、今はマンションか何かに変わってしまって、なくなっています。
父は、その向かいの古い内科に通っていました。一度行ったことがある気がしますが、古かったことしか覚えていません。なんでも父の言うことを聞いてくれるお医者さんだったようで、父は少し馬鹿にしたような言い方をしていました。内科の医者になったら、父に馬鹿にされる。そう思っていました。
そんな事とは関係なく、高校の時に見てもらっていた医者が、外科医だったので彼に影響されて外科になったんだと思います。喫茶店にバイトに行くなら、うちに来いと言われました。医学部進学が決まった春のことです。心電図のとり方を教わり、尿検査を任され、看護婦さんにくっついて、アンプル切りをさせてもらっていました。
ある日、入れ墨の入った人の胸水を抜くことになりました。先生は、患者さんに”内科に行けば、こんなことされずに済んだのに、不運だったな。。”そう言って、背中側から注射器をさして、胸水を抜きました。患者さんは、なにも言わずにじっとしていたと思います。
後で、先生が話されました。胸水を抜くのは、とてもしんどいことなんだと。彼は、やくざの親分だから、肝が据わっているんだと。普通の人なら、じっとしていないよと。。。
すごい世界があるんだと思いました。外科と内科では全く違うことも知りました。薦められる科ではなくて、やりたい科に進みなさい、そう話してくれました。彼は、耳鼻科向けだったそうですが、外科に入ったそうです。向いてなかったから、苦労はしたけどよかったと思うよとおっしゃってました。
その後、息子さんが、私の後輩になりましたが、すぐにバイク事故で亡くなりその通夜の夜に会いました。でっかい体で、すまんかったとおお泣きされました。何年もしてから、会いに行くと大学なんかに、長くいるもんじゃないとおっしゃってました。
久しぶりに会いに行ってみようかと思います。医者としては、私の師匠ですから。本当にでっかいからだの、貫禄のある外科医なんですよ。