痛みの訴えは本物かどうか
痛みというのは、不思議なものです。幻肢痛というものをご存知ですか?切断してしまった足の痛みを訴えるものです。ないはずの足が痛いと感じるのは、脳がしているのです。同じように、痛みを起こす原因がないのに、痛みを訴える場合があります。
特に、交通事故のように相手に対する怒りがある場合、怒りがいつまでたっても痛みを作り出します。こういった場合、怒りを抑えることのほうが痛みに対する治療になるのです。また、記憶が症状を再現することもあります。過去に同じようなことがあった場合、その時のことを思い出して、当時の症状まで出してしまうのです。
かゆみについても同様です。かゆいと感じるからかゆくなってくるのです。その場合は、かゆいと感じないように治療します。忘れることが大事ということでしょうね。
人の体というのは、とても不思議なものです。動物は、本能だけで生きているので、こういったことはないのだと思います。(動物病院の先生に聞いてみないとわかりませんけどね。)人には、理性というものがあって、これが治療の邪魔になることが多々あります。間違った思い込みが、治療の妨げになることも多々あります。
治療すべきものかどうかの判断も、難しいかもしれません。病気と正常範囲の境目って難しいものです。私の場合、患者さんが苦痛を感じなくなれば、ある程度の症状が残っていても、治ったという判断をします。加齢とともに、いろんな障害出てきても当たり前なので、若い時と同じに戻すというほうが難しいからです。
医療というのは、情報提供が仕事です。いろんな提案をして、選択するのは患者さんのほうです。そのことを忘れている人が多い気がします。